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重度意識障害患者のQOL向上に向けた長期リハビリテーションアプローチ



熱川温泉病院 リハビリテーションセンター 言語聴覚士  高橋 智子


 

 

 

【はじめに】
当院では、脳幹梗塞発症から2年半に渡り、意識障害や合併症を呈した症例に対し長期なアプローチを行った。
その過程で適切なリハビリテーションの介入より、意識レベル・コミュニケーション能力に改善を認め、QOL向上につながった症例を経験したので報告する。

 

【症例】
症例は40歳男性、診断は脳幹梗塞、障害名は意識障害・四肢麻痺、現病歴は平成14年6月27日ゴルフ練習中に頭痛・背部痛があり自身で救急要請しT病院へ入院。上小脳動脈から前下小脳動脈閉塞によるきょう梗塞の診断で、保存的治療を受け、胃ろうを造設した。平成14年9月9日、リハ目的にて当院に入院。平成15年7月14日、併発していた両側肺膿瘍の治療のためI病院に転院。同年7月31日、当院再入院となった。

 

【再入院時の状態】
再入院時の状態は、意識レベルGCS、E4V1M2、精神機能は精査困難、コミュニケーションは反応が乏しく意思疎通困難、身体機能は頸部・体幹の筋緊張は低下しているのに対し、四肢の筋緊張は亢進し、可動域制限が著明に見られた。そのため車椅子の乗車が困難な状態であった。リクライニング車椅子にて、タオルやクッションでのポジショニングが必要な状態であった。

 

【経過1】
平成15年8月3日からPTのみ開始した。意識レベル改善・二次障害予防目的に、刺激導入訓練・四肢ROM訓練を施行した。本人用のチルト機能付き車椅子が完成したためシーティングを施行したところ、四肢の筋緊張に低下が見られ、車椅子座位が安定した。また病棟の協力により離床時間が拡大し、肺炎などの合併症も減少した。平成16年10月頃より、下肢のクローヌス出現頻度が増加し、平成16年12月上旬に声掛けや冗談に声を出して笑う、頸部の随意性が出現するなど、意識レベルが急激に改善した。

 

【経過2】
平成16年12月17日より更なる刺激導入目的にOTを開始した。首振りによるYes-Noや口形での訴えが見られるようになったが、発声困難なため実用的な表出手段が必要となった。

 

【経過3】
平成17年5月1日、表出手段獲得目的にSTを開始した。検査上、精神機能に問題ないことが分かった。発声・発語器官の運動訓練を施行するとともに、実用的な表出方法として、視線を利用した透明文字盤の使用が可能となった。また5月下旬、随意的な右拇指内転運動が可能となり、OTにてコミュニケーション福祉機器の訓練を導入し、長文レベルでの会話が可能となった。

 

【現在の状況】
意識レベル清明、精神機能は検査上問題なし、コミュニケーションにおいては理解可能。表出は右手拇指の動きを利用したコミュニケーション福祉機器と視線を利用した透明文字盤にて行っている。身体機能面では頸部・体幹の支持性向上と下肢の筋緊張緩和により坐位バランスが改善。右上肢においては僅かな随意運動が可能となった。ADLは全介助レベルと変わりないが、座位の安定と耐久性向上により、車椅子乗車2時間可能となっている。

 

【PT場面】
座位訓練を行っているところ。

 

【OT場面】
コミュニケーション福祉機器を使用しているところ。

 

【ST場面】
透明文字盤を使用しているところ。

 

【考察】
継続したPTでの座位アプローチや病棟と協力した離床時間の拡大により耐久性や心肺機能が向上し、合併症予防・全身状態の安定につながった。更に継続的な刺激導入も影響し、意識レベルの改善につながったと考える。

 

【考察】
意識レベル改善に伴い、更なる刺激導入目的にOTが介入したことにより、意思表示の頻度が増加した。そこで、実用的な表出手段獲得目的にSTが介入したことにより、透明文字盤での表出が可能となった。またOTでは上肢機能の向上により、右拇指の内転運動を利用したコミュニケーション福祉機器の訓練導入が可能となった。これらがコミュニケーション能力の改善につながっている。

 

【考察】
長期アプローチの過程において、継続したPT介入、意識レベル改善時のOT介入、表出手段獲得のためのST介入といった、僅かな変化を生かした各科の介入のタイミング・連携が適当であったことにより意識レベル改善・QOL向上につながったと考えている。

 

【結語】
長期アプローチの過程で重度意識障害、合併症から改善した一例を経験した。適切な時期のPT・OT・ST介入や病棟との協力により意識レベルの改善、QOL向上につなげることができた。長期アプローチの過程においても適切な時期に適切な介入をすることが重要であると考えられた。

 

 

 


 
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